天才へのインプット

2016.11.15

引用元：ＮＨＫスペシャル「終わらない人　宮崎駿」

　
こんにちは。
ロックミーで代表をやっている小林宗織です。

NHKスペシャル「終わらない人　宮崎駿」でドワンゴの川上さんがAIで作ったキモい人体の映像をプレゼンして宮崎駿にディスられたという趣旨のネット記事が出回ってますね。
まとめニュースサイトなどで目にした人も多いのでは。

宮崎駿監督、ドワンゴ川上量生会長を一喝「生命に対する侮辱」The Huffington Post
ドワンゴ川上　宮崎駿監督にグロテスクなCGを見せ激怒される　NAVERまとめ

　
こんな感じで、たくさんの賛否両論が巻き起こっている。
どっちかというと、ドワンゴ川上さんのことを否定的にとらえる人が多い。

当の川上さんはこれまでの性格からして「よい宣伝になってよかった」くらいにしか思ってないと思うんだけどね。

これは、最近よく思うことだけど。
ネットはなぜ10ある事実のうち、たった1のネガティブの部分だけがまるで100の事実のように広まってしまうのだろうなぁ。
16日(水) 午前0時10分から再放送があるから、興味ある人は是非そちらをみて欲しい。

実際これは素晴らしい密着ドキュメンタリーで、70歳過ぎてモノづくりに葛藤する宮崎さんの姿は自分は勇気をもらった。

ＮＨＫスペシャル「終わらない人　宮崎駿」

個人的には、ドキュメンタリーのうちたった2分くらいのAIの部分も含めて

「なんだ。やっぱりぜんぶ鈴木プロデューサの手のひらのなかじゃないか。」

という印象。

宮崎駿は昔からコンピュータが大嫌いで、アニメ制作にCGを取り入れる時代になっても断固としてパソコンを使おうとしなかった。
ジブリにパソコンが置いてあるだけで不機嫌になるので、鈴木Pは最初「ワープロっぽい見た目」のパソコンを買ってきて置いたんだって（笑）。
そして宮崎駿が好きな将棋のソフトをインストールしておいて、わざと視界に入るようにして興味をもたせ、将棋で遊ばせるなかでパソコンに親しませていった。
そしたらなんと、このNHKの番組のなかで、宮崎駿がタブレットを学んでデジタル絵を描いたんだよ。少しだけど。衝撃。

全てをそうなるように細かく仕向けて行ってる鈴木Pがすごいし、デキるプロデューサはみんなそのくらいの策士だ。
腹黒いと言われようが、宮崎駿に「良い映画」を作らせるのがプロデューサの使命だからね。そのためには天才・宮崎駿にガンガンと新しいことをインプットして、消化させなければ、いままでと違うものが出てこない。

まとめニュースだけ見てるとわからない人が多いかもしれないけど、AIを否定された川上さんは（ああみえて）大成功している会社のトップで、社長なのに鈴木Pのカバン持ちとしてジブリでプロデューサ修行をしているくらい、普段からジブリに絡んでる人。
部外者ではなく、むしろジブリの身内だよ。
川上さんはこれまでのドキュメンタリーでもこういうシーンを切り取られることが多いけど、本人がそうやって使われるのをわかっててやってるのがすごいと思う。それだけジブリを尊敬しているんだね。

実際宮崎駿は人工知能を否定したんじゃなくて、
「人の気持ちに寄り添わない」
モノ作りのスタンスを指摘したのだと思う。

天空の城ラピュタで庭のメンテをしているロボット兵がいたけど、パズーとシータが乗ってきた飛行機の下に鳥の巣があったので、それを避けるシーンがあったのを憶えていますか？
宮崎駿のAIのイメージはああだったわけでしょ？　
人間や生き物の気持ちに寄り添うロボット。
だけど、川上さんがプレゼンしたのは完全に技術者目線で「こんなことができる」のプレゼンだったから、かみ合うわけがないよ。
でもどっちの目線も大事なわけで。

川上さんは、ロボット兵を兵器としてプレゼンしちゃった感じ(笑)。
でも、たくさんのエンジニアと仕事してきてわかるが、ピュアなエンジニアほど、こうですよ。
純粋にモノづくりが楽しくてやってるから「生命に対する侮辱」なんて微塵も考えてないよ。
宮崎駿が面白がると思って見せてる。

だから自分の眼には、むしろ技術者としてウソがなくて、好感だった。

そして。

宮崎駿がキレたようにしか見えない、このネガティブなインプットが、天才にとってはガソリンになる。
これが「全部、鈴木Pの手のひらのなか」だと思う根拠です。

私もこれまで、アーティストや作家さんと仕事をさせて頂く機会が過去に何度もありました。
作家の方が遠慮なく、本気で感情をぶつけてくるということは、作家にとってあなたは
「ぶつけても大丈夫な人」
と認識されているということです。
身内ということです。
だからむしろ、宮崎駿の川上さんへのお叱りはとても、羨ましいです。

とにかく、いったん長編映画からの引退を宣言した宮崎駿が、2020年までに映画を世に出すと宣言したわけ。
自分は80歳になるというのに。
作ってる途中で、自分が死ぬかもしれないのに。

ただ、背筋が正される。

【追記】

恐らく川上さんご本人が匿名で(笑)こんなこと書いてますね

めっちゃ怒られているのがテレビで放送されてしまった
http://anond.hatelabo.jp/20161116152814