ありがとうジョナサン・ケイナー
こんばんは。Rock Me!の小林宗織です。
この7年間、ジョナサンの日本での活動をマネジメントさせて頂いてまいりました。
私はコンテンツプロデューサなのでビジネスに寄った舞台裏のお話しかできませんが、私なりの視点と言葉でジョナサンとの日々について書き残しておきたいと思います。
また逢う日まで
既にネットメディア等でご存知の方も多いかと思いますが、弊社で日本の活動をマネジメントをさせて頂いている英国の占星術師、ジョナサン・ケイナーが5月2日、心臓発作により他界しました。
享年58歳でした。
・Jonathan Cainer: Facebookページ(英語版)
・Daily Mail(デイリーメール紙)
・Astrologer Jonathan Cainer: Daily Mail horoscope writer dies(BBCニュース)
・Astrologer Jonathan Cainer dies(ガーディアン紙)
ジョナサンが世を去った翌晩、ジョナサンと30年ビジネス一緒にをやってきた相棒であり、エンジニアのスティーブから電話が鳴りました。
「ムネオリ、悪い知らせがある。ジョン(ジョナサンのこと)が昨晩亡くなったんだ……。心臓発作らしい。」
ジョナサンとはつい数日前までメールでやり取りをしていましたし、全く実感のわかないスティーブの言葉に、事実を受け入れることを脳が拒否しました。
ただただ、ショックでした。
そして正直に申し上げて、今もまだなんだか実感がありません。
手を止めてしまうと、
・足かけ7年間、一緒に日本でビジネスを立ち上げ、苦楽をともにした思い出
・お互いの生い立ちなどを夜中まで語りあった思い出
・これをやって日本のファンを喜ばせよう!と語りあった夢
などが次から次に湧き出て、涙に変わろうとします。
でもとにかく今は冷静に、ファンや読者みなさんに公式な場でお伝えをしなければ。
まずは英国チームと連動して、Facebookに第一報を掲載しました。
日本版オフィシャルFacebookページ
ファンの皆さんから
「いままでありがとう!」
「苦しいときにいっぱい救ってもらいました!」
「いつも背中を押してもらってました!」
といった書き込みがどんどん続きました。
今も続いています。
※皆さんがFacebookやメールでお寄せくださったお別れの言葉は、まとめてジョナサンとご遺族に届けます。
日本はじめ、世界中にいるたくさんのファンから愛され、そして彼もファンを愛し続けてきたからこそ築かれた目には見えない、数字では測れないもの。
信頼関係。絆(きづな)。
こんな絆をインターネット上で読者と育める人が地球上に何人いるのだろう。
それを成し得る文才、優しい語り口、チャーミングな笑顔と誰でも和ませてしまうユーモア。
いつも話していて
「神様に与えられた人っているんだなぁ」
と思ってしまうほど、ジョナサンは才能あふれる人物でした。
そしてその才能に溺れず、誰も見ていないところで努力を重ねていた人でもありました。
改めて、こんな人物と近くで仕事をさせてもらっていた私は、なんて恵まれていたんだろうと思います。
私たちcainer.jp運営スタッフも皆深い悲しみに包まれながら、ジョナサンには
「ありがとう」
としか言葉が思いつきません。
ジョナサンはプロフィールで自身を
「Truth Seeker(真実を求める者:探究者)」
と表現するのが好きでした。
だから彼はこれからも、探究の旅は続けていくのでしょう。
残された私たちが肩を落としたままでは次の旅に出にくいでしょうから、気丈に送り出してあげたい。
たくさんの笑顔を貰った分、笑顔で送ってあげたい。
ジョナサン、本当にありがとう。
また逢う日まで。
たくさんのありがとう(Special Thanks!!)
ジョナサンの日本版サイトcainer.jpの運営は多くの方のご協力で成り立ちました。
・初期サイト管理人 兼 現cainer.jp「今週の運勢」翻訳担当 竹内様
全ての発端となったのは竹内さんでした。竹内さんがジョナサンに会い、ボランティア翻訳サイトを立ち上げ、今週の運勢を翻訳・掲載するところから始まりました。
cainer.jpが現在の形で毎日の運勢など掲載するようになってからも、今週の運勢やその他でご協力を頂きました。
竹内さんがいらっしゃらなければ、ジョナサンは日本でここまで有名になっていたかわかりません。
竹内さん独特の翻訳スタイルによる訳文は美しく、初期のファンみなさんを魅了しました。
・cainer.com エージェント マーク
「ジョナサンは気難しくて、ビジネスの連絡をしてもまったく返事がない」と業界で(嘘のような本当の噂が)ささやかれていたころ、私がダメもとで送ったメールに返事をくれたのがエージェントのマークでした。
彼がロンドンで私にプレゼンテーションのチャンスをくれなければ、今の形で日本語での毎日の運勢や鑑定書サービスの提供は実現していませんでした。
3年前、「cainer.jpをもっと良くしていこう!」と言っていた矢先にマークは一足早く旅立ってしまいました。このブログの最上部に置いたジョナサンと私の写真はマークが撮影してくれたものです。
これは2010年に占い@ニフティ様がセッティングくださった占星術研究家の鏡リュウジ先生とジョナサンの対談イベントでの写真です。
ジョナサン初来日ということもあり、イベント終了後にたくさんの方が握手を求めて行列ができました。
右下はマークです。マークはこの行列をみて、
「日本でもジョナサンは成功しそうだね」と会場の空気に興奮していました。
・現cainer.jp 今日の予言 翻訳担当 ロックエンジェル・リミテッド 結城様
主に毎日の運勢やコラムの翻訳、鑑定書サービスの翻訳を担当していただきました。
サイト掲載の数日前に届く毎日の運勢12星座分やコラムを、7年間一度も落とすことなく(!)翻訳してくださりました。ジョナサンの扱う占星術や哲学的なフレーズの数々を訳し続けるのは超人的な仕事です。結城さんの存在なしには、クオリティを維持してジョナサンの毎日の運勢の提供が実現できませんでした。
・システムエンジニア スティーブとティム
サイト、サーバーの日々のメンテナンスやPDF商品、新商品開発を担当していました。
サイトに不具合が出た時、何時だろうと、どこにいようと(実際ティムは南アフリカ在住)必ず数時間以内に問題解決してくれるスーパーエンジニアチームでした。
鑑定書のサービスなどジョナサンが思いついたアイディアは、彼らの高い問題解決力があったからこそ実現してこれました。
・運用担当 P社 岐阜チームの皆様
翻訳に誤字脱字がないか、誤解を招く表現がないかなどのコンテンツの品質チェックを中心に土日祝日関係なく稼働してくださりました。ファン皆様への安定したコンテンツ提供を支えてくださいました。
■SPECIAL THANKS!!
鏡リュウジさん。FRAUでの対談やライブイベントはジョナサンたちに色々な可能性を見せてくださいました。
ヤフー占いプロデューサS様、チーム皆様。人通りの多いYahoo!の占いコーナーにジョナサンの運勢を常設掲載していただけたことで、それまでジョナサンを知らなかった多くの方にジョナサンを知っていただくことができました。
占い@ニフティ 旧ご担当皆様、S様、W様、H様。鏡リュウジさんとの対談イベントはジョナサンにとってとても追い風となりました。イベントの舞台裏ではいろいろと想定外が発生し、偉い方々まで走り回ってお土産のケーキを運んでくださったこと、ジョナサンもマークも感謝しておりました。
株式会社エムティーアイ、元事業部長のK様、現事業部長Y様、営業担当H様、元担当のM様、そしてビジネス推進してくださったケビンさん。日本での通信キャリア領域でのビジネスを推進して下さいました。M様のことは「日本のマンガのような大きくてキラキラした目の女性がほんとうにいたんだね」とジョナサンの印象に残っていたようです。
その他、雑誌編集の皆様や出版業界の皆様、テレビ業界の皆様、たくさんの方々と読者の皆様に支えられてサービスを運営してまいりました。
この場を借りまして、心より御礼申し上げます。
ありがとうございました。
ジョナサンの配信していたものは。
※ジョナサンに日本版サービスの概略を説明したときのホワイトボード
あれは2002年ごろでしょうか。
私はベルシステム24という会社のコンテンツ開発部門に所属していました。上司であったプロデューサのSさんが、説話社から出版された「英国式占星術」というジョナサンの翻訳本(訳は上述の竹内様)をもとに、ウェブサイトを制作したことがありました。ですのでそのころからジョナサンという占星術師(アストロロジャー)の存在は知っていましたが、深い関心を抱くには至りませんでした。
前職で現ロックミーの企画責任者である成田と出会い、
「小林さん、ジョナサン・ケイナーがイギリスでやっていることを日本語でぜんぶやれたら、ファンが喜びますよ」と言われてから、しっかりとコンテンツを見るようになりました。
成田が大のジョナサンファンだったようです。
いろいろな人から「ジョナサンはちょっと違う」という前触れがあったのでですが、cainer.comのジョナサンの文章や竹内さんの訳文をみて、「なるほど!」と思いました。
ジョナサンが登場するまでの「ネットの占いコンテンツ」を極端にいうと、淡々と今日の運勢などを伝えるだけのものが多かったのです。
たとえば「今日のあなたの運勢は●●点です。すごく幸運なできごとがあるでしょう。・・・」みたいな調子です。
良い悪いではなく、読者からは、高いところからお告げがおりてきているような感覚でした。
読者からみて鑑定者が実際に話しているイメージはつきにくく、遠いどこかにいるような距離感。
それがジョナサンの予言はアプローチから違っていました。
読者にその場で一方的な答えを与えてしまうスタンスではなく、
「あなたの今の課題はこうだよね?それをこういう視点で見てみたらどうかな?」
「いま問題に思えていることも、あなたがこうとらえれば少しずつ良くなっていくよ」
「またこれにぶつかったの? でもあなたは○○座だからそれを受け入れてみたら?」
といった感じで、「一緒に考える」もしくは「そばにいて見守る」というようなメンター的な距離感でした。
よくネットに
「ジョナサンは後ろで私をみているみたい」とおっしゃってくださる方がいましたが、こういう距離感もそれを感じさせてくれたのだろうと思います。
私のプロデューサ目線では、この距離感が今の時代にとてもフィットするんだろうなと思いました。
時に哲学的な言葉を用いて問いかけるジョナサンの予言は、読み始めたばかりの人にとっては
「何を言っているのかわからない」
「今日のこれはどう考えればいいの?」
と思うことが多いようです。
英語の原文に用いられた言葉自体が難しい話も多かったので、訳者たちを困らせましたし実際にお問い合わせをよくいただいておりました。
でもそれこそジョナサンが意図したこと。
とにかくジョナサンは
「その場限りの答えをあげてしまう」
ということをしませんでした。
読者にヒントをあげて、何日かかっても一緒に考えて、時間をかけて、本人が答えを出すというプロセスを一番大切にしていました。
一言でいえば、内省を促すということかもしれません。
過去にお客様がFacebookなどに寄せてくださったコメントで、ジョナサンの本質を指摘されていた投稿を2つ引用させていただきます。
ジョナサン あなたは、比喩を全面に出すことで、読む者に自分で考え自分の中から答えを引き出させる傑出した星占いの表現者でした。
そして、困難な人生を歩む私達へ、けして絶望をさせない決意のもとに書かれたような心優しいあたたかい言葉や背中を押す励ましが常に占いの根底に在りました。
ジョナサン・ケイナーは、ナイスで神な占星術師だ。
てけとーなことしかいわんwww
しかしそれが人の深層心理に響く。
そう、内観を促すメッセージの伝え方をするたぐいまれなる占星術師だ。
このお二人がおっしゃるとおりだと思います。
ジョナサンは読者が自らメッセージの意味を考え、そして決断し、行動に変えていく力があると信じていたんです。
そしてジョナサンは、どんな悪い状況でも本人が良いほうにとらえていけば、必ず状況は好転していくはずだということを信じていました。
惑星が逆行(惑星が地球からみて通常と逆方向に移動しているように見えるタイミングのことで、凶兆とされることが多い)をしても
「逆行は必ずしも悪いことではないよ、むしろ●●をふりかえるするチャンスだよ」
というふうに常にポジティブに言い換えていたのも、それが根底にあったのでしょう。
そうして人類が一人でも多く、良い方向にものごとをとらえるようになれば、世の中は少しずつ平和になっていくと考えていました。
さらにジョナサンは、予言に点数や順位を付けることを嫌いました。
朝のテレビ番組などでも、「今日の射手座は1位です、ビリは蟹座!」みたいなことをやってエンタメ性を持たせます。これはこれで日本では人気がありますが、いくら日本の状況を説明しても、コンテンツ開発会社がそれをやりたがっても、ジョナサンは首を縦には振りませんでした。
なぜなら、
「他者と自分を較べることが、読者を勇気づけることにはならない」
と考えていたからでしょう。
彼はもともと「占い」を配信したかったのでしょうか。
「アストロロジャー(占星術師)」として記憶されたかったのでしょうか。
私は、ちょっと違うと思ってみていました。
多くの人にとって彼は占星術師以上の存在、メンター(精神的指導者)、人生の師のような存在だったのではないでしょうか。
彼は、その才能を最大限に生かして、
愛し方を知らない私たちに愛するすべを、
過去にとらわれてしまった私たちに、未来に希望を持つ勇気を、
インターネットを通じて教えてくれていたのだと思います。
彼が配信していたもの、それは「愛」なのだと思います。
ロックミーがもらった勇気
実はジョナサンと仕事を始めたのは、前職にいた頃でした。
その後私は自らのコンテンツ開発会社(Rock Me!)を興しました。
もちろん、ジョナサンは前職の会社と契約を結んでいましたので、関係者に余計な心配をさせまいと退職の事実を告げずに去りました。ところが、その後しばらくして、私あてにジョナサン側から連絡がありました。
驚いたことに
「私たちはムネオリやシマ(弊社企画責任者)と仕事がしたい」
と言ってくれました。
でも契約を私たちに切り替えるとトラブルの元ですし、ジョナサンたちの収入も明らかに減ってしまうのが目に見えています。
「気持ちをありがとう。もったいないから今やっていることはそのままつづけたほうがいいよ」
と伝えると
「目の前のことよりも、将来のためにキミたちのような頭脳(ブレーン)と仕事がしたいんだよ」
と言ってくださいました。独立して日も浅く、数人で来月食べていけるか全く保障のなかった私たちに、ジョナサンがかけてくれたこの言葉が、どれだけ心を打ち、勇気をくれたか。
そして狭い表参道の事務所へスティーブとわざわざ訪ねてくれたことが、どれほど嬉しかったか。
宇宙船地球号の意志を継ぐ
ジョナサンがよくコラムに書いていた
「私たちは同じ宇宙船地球号に乗っている」
という考え方が大好きでした。
彼らしさが表れた素敵すぎる言葉だなと思います。
ジョナサンからは仕事以外にもたくさんのことを教わりました。
男どうしでバーに行き、はじめて30年ものの極上のスコッチウィスキーを飲ませてくれてたのも彼です。タイで会ったときも、日本で会ったときも、お酒を飲んで夜更けまで話し込みました。
お互いの生い立ちや、(男どうしですから)女性観まで。
あるときはビジネスパートナー、あるときは兄、あるときは父のようでした。
私は一人の人間として、ジョナサンからたくさん教わりました。
苦しいときに笑い、前を向く勇気ももらいました。
彼からはたくさんもらっていたのに、急にいなくなるから返すに返せなくなってしまった。
それなら、ジョナサンの意思を継いでいくしかない。
私はアストロロジャーではないけれど、彼の意思は私なりの形で引き継いでいけるはず。
彼へのPay Back(恩返し)はできなくなってしまったけれど、彼の意思をついで、Pay Forward(恩送り)はできる。
彼の甥で占星術師のオスカーを何らかの形で支援することもそうだし、ジョナサンのような新しい才能を発掘してきちんと世に知らせていくことも、プロデューサの私が世の中の役に立てることなのかもしれない。
ジョナサンが日本をはじめ、世界にいる占星術師たちに与えた影響も小さくないと思います。それによって発芽した次代の才能たちと、たくさんの思い出を創りたい。
そしていつかまたジョナサンと30年もののスコッチを飲みながら語らいたい。
彼が旅立った日の射手座(ジョナサンの星座)の予言にあった
「We are not here for long, so we should make the most of every moment.
(私たちの人生は短いから、一瞬一瞬を精一杯生きるべきです)」
という言葉のとおり、この宇宙船地球号に乗っている一瞬の人生を、とにかく精一杯に生き抜こう。
ジョナサン、たまに宇宙船の窓から宇宙(そら)をみあげるから、手を振って下さい。
I will always miss you, my friend.
Sayonara for now.
Truth Seeker 小林宗織
いくつか、こぼれ話
思い出話に近いですが、ジョナサンについて覚えていることです。
・ビーガンである
彼はストイックなビーガンでした。
※ビーガンとは卵や乳製品も取らない絶対菜食主義者のことです。
ただでさえベジタリアンメニューの少ない日本では、彼が来日すると食べ物やレストランの手配が一番大変でした。
「日本はTOFUがたくさんあって、ビーガンには最高だよ!」と本人はいつものんきでしたけれど。(笑)
・ランキングをやったことがある
先ほどジョナサンはランキングが嫌いだという話をしましたが、例外がありました。
年始にイッテQという番組に出演した時だけ、2回やりました。
一時的に特定の芸能人にランキングを付けるだけなので、乗り気じゃないところを無理を言って、やってもらいました…。
・虹
イギリスでプレゼンテーションを終えた後、きれいな虹が出ました。(写真は同行した成田)
これからいいことが始まるんだなと思いました。
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