「Rock Me!で働くということ」 その6 「パくるよりパクられる人に。」
スターバックスコーヒーが日本に上陸してきてブームになった時、スタバそっくりなコーヒー屋さんが乱立したのを覚えていますか?
老舗のコーヒー店までロゴや看板がスタバそっくりになっていって。
今でこそ定番になったエクセシオールも最初はロゴがスタバに似すぎて裁判沙汰になっていた記憶があります。
市場というのは、こういうふうに誰かが今までにない革新的なモノやサービスを市場に投入して、それがブームを引き起こして売れ始めると、他のライバル企業がそれを真似(パクリ)ながら追随していきます。
その結果、それまでになかった新しい市場が形成されます。
実際、商品ブランディングの考え方では、パクリ商品が出回ることで正規品のブランド価値が上がっていくという現象も起きたりします。
スターバックスの模倣が出たことがニュースとなって、スタバを知らない人たちまで「スタバってすごいんだね」というふうに認知するわけです。
コンテンツの世界にももちろんパクリ、パクられが存在します。
記憶に新しいところでは、ガンホーエンタテインメントというゲーム会社が作った大ヒットゲーム「パズル&ドラゴンズ」(通称パズドラ)が世に出た数週間後には、App StoreやGoogle Playにはコンセプトまるパクリなそっくりゲームが出回り始めました。
後から出てきたパクリ商品がオリジナルを超えてしまうことは滅多にありませんが、数がたくさん出てくるので市場全体を流れるお金の8割がパクリ商品やサービスによって占められていくことになります。
ロックミーのメンバーには、「パクるだけの会社には絶対になってはいけない。」と強く言っています。
ライバルのやり方から何かを学ぶことはよくあることだし、ライバルウォッチはコンテンツ屋として当然の習慣です。
こちらがさらにそのライバルの工夫に上乗せしてライバルを上回るのであればかまいません。
しかし単純に真似するだけは、ロックミーでは禁止しています。
ゼロから何かを生み出す方法を知らない会社だと、社長が「ライバルを徹底的にパクれ」という大号令を出すことがあります。
有名な堀江さんことホリエモンが引っ張っていたころのライブドアはまさにこの作戦でポータルサイトとしてナンバーワンのヤフーに肉薄していたことがありました。
ホリエモン自身がテレビに出演しまくって、「ライブドア」というサービスの認知をあげて、ライブドアにアクセスした人たちは「あれ、ヤフーそっくりで使い勝手悪くないぞ」と思わせる作戦です。
これはベタで強烈でした。彼があと1年逮捕されていなければ、ヤフーはメディアとしてライブドアに追い抜かれていたでしょう。
※実際私は当時ヤフーにいて、ライブドアの急追に焦りを覚えていました
でもこれはあくまでホリエモンの個人技です。
彼は、従業員に自分たちでゼロからモノをつくってくれることを期待していなかったのだろうと思いますし、彼が達成したいことは、従業員の成長を待っていたら叶わなかったのだろうと思いました。
私は、企画マンとしてコンテンツの世界で生きてきてパクリだけで仕事を進めたことがありません。
電子コミックと占いコンテンツの分野では、業界初となる仕掛けもたくさんしてきました。
なかにはライバルに真似された企画がたくさんあり、それがその後の市場の8割を占めて、大きなうねりとなっていったことがありました。
でも私はそれがうれしくて仕方ありませんでした。
市場が私自身の生み出したトレンドを評価してくれたからです。
そして何より、苦しい思いをして生み出した分、さまざまなノウハウが自分の血と肉になりましたし、そのノウハウを他のジャンルに活かしたり、後輩に受け継ぐことができるようにもなりました。
そのノウハウはなかなか言語化するのが難しいものも含まれていて、ビジネス書には載っていないことがたくさん含まれます。
社員が頑張ってゼロからモノづくりする会社は、社員のなかにノウハウと経験、自信というお金で買えない財産が蓄えられるのです。
これこそ、会社がいざ苦境に立たされたりするときに突破口を見出すための武器になるのだと思います。
ゼロから何かを生み出すのは頭で考える以上に大変です。
正直、常に「楽」な道を選ぶ思考回路の人にはそれは不可能です。
「楽しくしたけりゃ楽しちゃダメよ。」
と甲本ヒロトが言っていたのはこういうことなのかもしれませんね。
一緒に働くメンバーには、苦しくてもゼロから生み出すことを楽しめる人たちになってほしいです。
そして私が企画メンバーを一人前と認めるのは、他社にパクられる何かをつくったときからです。
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