「Rock Me!で働くということ」 その3 「少数精鋭。株式上場を1ミリも目指していません。」
「Rock Me!さんはIT企業なのに株式上場を目指さないなんて珍しいですね」
といわれることがあります。
私は起業することを決めてから経営学を真剣に学び、従業員が数千人~数万人の規模の急成長している会社にいくつか在籍しながら、会社の経営を自分の目でみて、さらに手を動かしながら学んできました。
私は大企業をリスペクト(尊敬)していますが、それはあくまで日本の高度経済成長の波に合わて生まれたひとつの企業統治の形なんだろうなと思っています。
そして、今の時代のIT企業は、小さい企業体でいることのほうが望ましいと考えています。
その結果、私のなかで一つの解ができました。
「社員数は20人以上にしない」という考えです。
これはシンプルにいえば、組織が大きくなりすぎて余計な脂肪がついてしまうと、いざというときに素早く動けなくなるので、ずっと筋肉質で素早く方向転換できる会社でいたいということです。
テレビやネットで、世の中の話題になるIT企業というのは、
(1)儲かりそうな新しいビジネスモデルを発見、もしくは考案
※アメリカのビジネスモデルを持ってくる人がほとんどですが
(2)投資家を説得し、事業資金を募る
(3)出資された大きなお金をもとにスピーディに事業を進める
(4)事業を軌道に乗せながら、株式市場への上場を目指す
(5)上場して、投資家がキャピタルゲインを得る(儲かるということ)
こんなステップを描いて進んでいきます。
ロックミーもたまに投資家の方からアプローチを受けることがあります。
ありがたいお話なのですが、出資等のお話はすべて丁重にお断りさせて頂いています。
もちろん、上場を目指すという行為が悪いことなのではありません。
メリット・デメリットを比べた時に、私の考えではロックミーのようなコンテンツ屋にとって上場という選択肢はデメリットのほうが圧倒的に多いと感じているからです。
上場を目指す一番のメリットはやはり事業資金(設備投資や運転資金)の調達ですが、ロックミーはコンテンツの企画開発屋ですから、人間が頭脳を寄せ集めて、知恵を絞って磨き上げて、ゼロから何かを生み出していくことが生業です。
お金だけたくさんあっても、急に知恵を絞れるメンバーは集まりませんし、投資する設備もない。持て余してしまう傾向にあります。
幸いインターネットは進化が速くて、もはや簡単なサービスを提供するのにバカ高いサーバーもいりません。昔に較べて初期投資なんて数十分の一規模に少なくて済むのです。
2000年ごろから通信キャリアの携帯公式サイト(有料月額コンテンツ)のビジネスモデルでITバブルの波にのって成長し、上場までした会社がたくさんあります。
こういった会社が発信している株主向け情報(IR情報)をみるとわかりますが、彼らはスマートフォンの波が押し寄せると同時にバブルがはじけはじめ、株主たちのプレッシャーのなかで成長を維持するため、無理に買収戦略で子会社を増やしたり、中国に進出してみたり、本業と違うところでたくさんの勝負に出ていった結果、今や大変な苦戦を強いられているようです。
すごく厳しい口調になりますが、それらの会社が今になってからスマートフォンの時代に合わせた戦略に切り替えたくても、一度通信キャリアの庇護のもとで作られてしまったメタボ気味な図体ではスピードが追い付かなくなってしまっていて、月額サービスの会員数を減らさないための施策を打つことで手一杯になってしまっている印象です。数年前まで画期的なサービスを生み出して世を驚かせた会社とは同じ会社に見えないくらい、現場に覇気もありません。リストラ施策一辺倒になってしまっています。
たくさんの従業員を雇い入れることも素晴らしい社会貢献ですが、その人たちが成長できるステージがほとんど作れず、苦しくなった瞬間に雇い入れた人たちをバサバサと切り捨てるような船の舵の握り方は私はやりたくありません。
これは正しい、正しくないではなく、好き嫌いの話です。
5年前は、誰もiPhoneのようなスマートフォンがここまで一気に普及していくとは考えていませんでした。
でも、こういう潮目の変わるサイクルがIT業界は特に早く、数年単位でやって来ます。ロックミーはそういう素早く舵を切って進路変更していかねばならないときに、組織がコンパクトに筋肉質でありたいのです。
会社を大人数にしない理由は細かく話せば他にもたくさんあるのですが、
「大人数ではビジョンやものの考え方をひとりひとりとしっかり共有できない」
というのも大きいです。
私は、役職ではない一般の社員でも、日々の業務で何か判断を迫られたときに
「代表ならどう考えるだろうか?」
というのがリアルに思い浮かんでほしいのです。
そのためには私とメンバーが頻繁にコミュニケーションして、お互いの意見を交換し合える環境が必要です。
少数精鋭の精鋭というのは、単にスキルの高い人たちの集まりではなくて、ビジョンを共有している人たちということなのだと考えます。
社員が20人くらいの会社だと、そのメンバーの先にいる家族を含めれば100人くらいの生活にかかわることになります。
デジタルコンテンツをつくる会社でも、作っている人はアナログな人間ですから、その人たちが顔色が悪かったり何か困っていることがあれば、それに敏感に気がついてあげられるのは私の器では社員20人が限界です。
そういう環境を維持していくのには、株式公開や上場は選択肢に入ってこないのです。
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